スクリーン印刷のにじみや寸法ズレは、版とワークの隙間「クリアランス」の設定が原因かもしれません。適正値の目安と調整のポイントを解説します。
スクリーン印刷のクリアランスとは、スクリーン版と印刷する基材(ワーク)との間に設ける距離のことです。スクリーン印刷で重要な4つの印刷条件の一つとされています。
印刷時には、スキージでスクリーン版をクリアランス分だけ押し下げます。すると、その反発力によって版が基材から離れてしまう現象が「版離れ」です。つまりクリアランスは、インキを基材に転写したあと、版をきれいに引き離すためのバネのような役割を担っています。
現場では「オフコンタクト」や「ギャップ」、手刷りの分野では「浮き」とも呼ばれます。
クリアランスは、小さすぎても大きすぎても不良の原因になります。症状ごとに、どちらに振れているかを見極めることが大切です。
クリアランスが小さすぎると、版を押し下げたときの反発力が足りず、版離れが悪くなります。小さすぎると版離れが悪くなり、同時に印刷品質も悪化してしまいます。
版離れが悪い状態とは、スキージが通過したあともメッシュが印刷面に長く張り付いていることです。その結果、版側にインキが残って抜けが悪くなり、インキの欠けや膜厚のバラツキ、ピンホール、ムラ、にじみといった不良が起こります。
クリアランスを広げれば版離れは良くなりますが、そのぶんスクリーン版への負担が増えます。版離れを改善するためにクリアランスを標準より大きく設定すると、メッシュ自体が塑性変形してしまい、「版伸び」による寸法精度の低下や版寿命の短縮につながることも懸念点です。
版とワークのギャップ(オフコンタクト)が大きいことが、にじみ、印刷の二重化、デザインの延びの原因として挙げられます。「版離れを良くしたいから、とにかく広げる」という対処は逆効果になりかねません。
参照元:新東洋スクリーン株式会社(http://www.shintoyo.jp/faq/trouble.html)
参照元:アサダメッシュ株式会社 プレスリリース|@Press(https://www.atpress.ne.jp/news/15168)
一般的な目安として、金属メッシュのスクリーン版では、版枠サイズ1メートルで約3mm程度が標準的なクリアランス量とされています。スクリーン印刷の技術解説でも、「スクリーン枠内寸の1/300」が標準の値として示されています。
ただし、これらはあくまで目安です。スクリーン版が歪まない範囲での設定が適正とされており、最適値は版枠サイズ、メッシュの種類、インキ・ペーストの粘度、ワークの形状によって変わります。たとえば高粘度ペーストは版離れが悪いため、クリアランスを大きめに取る必要があるとされています。目安値から始め、試し刷りで仕上がりと寸法を確認しながら詰めていくとよいでしょう。
引用元:アサダメッシュ株式会社 プレスリリース|@Press(https://www.atpress.ne.jp/news/15168)
引用元:ものづくりドットコム(https://www.monodukuri.com/gihou/article/1770)
クリアランス調整の基本は、版とワークの隙間を版全体で均一にすることです。版枠が傾いていると、場所によって実際のクリアランスが変わり、版離れや印圧にムラが出ます。
手刷りでは、フレームを四隅か3か所で持ち上げると安定しやすく、傾きなくフラットに保つことがポイントです。量産機でも考え方は同じです。版枠の複数点で高さを測ってそろえ、ワーク面と平行になっていることを確認してから条件出しに入ると、不良の原因を切り分けやすくなります。ワークが版枠より小さい場合や、版の一部がワークからはみ出す場合も、版を平らに保つことを優先しましょう。
クリアランスは単独で決めるものではなく、テンション・印圧・スキージ条件とセットで考える必要があります。適正なスクリーン版のテンションで適正なクリアランス量を設定することが大切です。
クリアランスを多く取れば版離れは良くなりますが、版への負担が増えて印刷精度が落ちるおそれがあります。少ないクリアランスで版離れを良くするには、テンションを高く張ることが端的な対策とされています。また、ギャップの大きさと並んで「スキージ圧が強すぎる」「紗張り時のテンションが低い」も、にじみや二重印刷、デザインの延びの原因として挙げられます。
なお、版離れを改善するために他の条件を変える方法にも、それぞれリスクがあります。インキの粘度を下げるとにじみの増加や解像性の低下、スキージ速度を下げるとにじみの増加や生産性の低下につながるおそれがあります。
化粧品容器やボトルなどの円筒形ワークでは、ワークを回転させながら版を同じように動かして側面に印刷します。平面印刷では版と素材の接触条件や距離を比較的安定させやすいのに対し、曲面では曲率があるため版や圧力を均一にかけにくく、かすれや仕上がりのムラにつながります。
さらに、ワークの回転と版の移動にずれがあると、版とワークの接点や圧力のかかり方が変わりやすいと考えられます。楕円断面のボトルのように回転中に半径が変わる形状では、なおさら管理が難しくなります。そのため曲面印刷では、ワーク回転と版移動の同期精度により仕上がりも左右されます。
条件調整を尽くしても版離れと寸法精度を両立できない場合は、設備側を見直すのも選択肢です。大型機で使われる版離れ改善装置(ピールオフ・オフコンなど)は、スクリーン枠の片側をリフトアップして版離れを助けます。ただし、枠サイズ1000mmの計算例では、リフトアップ量3mmで実際のクリアランスが約1.1mm増えるとされており、設定値以上に版が押し下げられて版が歪み、寸法精度が低下するリスクに注意が必要です。
曲面印刷では、ワーク形状への追従性や、回転と版移動の同期制御の精度が仕上がりに直結します。ワークの形状・寸法と求める精度を整理したうえで、個別仕様の設計に対応できるかも含めて印刷機メーカーに相談するとよいでしょう。
参照元:ものづくりドットコム(https://www.monodukuri.com/gihou/article/1770)
参照元:コニカミノルタ日本文化精工株式会社(https://jnpt.konicaminolta.jp/product/screen/index.html)
スクリーン印刷のクリアランスは、版離れを生み、印刷品質と寸法精度を両立させるための重要な条件です。小さすぎるとにじみやダブり、大きすぎると版伸びや寸法精度の低下を招きます。「枠内寸の1/300(1m枠で約3mm)」を目安に、テンションや印圧とあわせて試し刷りで最適値を詰めましょう。それでも改善しない場合は、印刷機の機構も見直してください。
スクリーン印刷機の中でも、印刷物の種類によってメーカーの得意不得意があります。そこでここでは印刷物に合わせておすすめのスクリーン印刷機メーカーを厳選して紹介。メーカー選びの参考にしてください。


